『働きやすい環境作りとは?』(千歳ぴっち小規模保育園・新井園長)

今回は、ぴっち小規模保育園の新井園長先生です。
立ち上げからの離職率がほぼゼロの小規模保育園です。とても珍しい取り組みとして、職員の休憩専用の部屋としてアパートを用意しています。なぜ、そこまでの環境を作るのか、働きやすい環境づくりに対する考えなどをうかがってきました。

【小規模認可保育園って、どんな保育園?】
0-2歳までの子どもを保育する認可保育園の一形態です。定員が最大19名と決められているため、少人数をしっかり保育できるという印象を持っている保育士の方が多いです。一方で、職員の総人数が、一般的な保育園に比べて少ないです。そのため、保育園によっては、有休が取りにくいことや、急な職員の欠席・退職があると、仕事の負荷が高まりやすいことがあります。

【千歳ぴっち小規模保育園の概要】
社会福祉法人砧福祉園が運営する世田谷にある13名定員の小規模保育園。一人の保育スタッフが担当する子どもの数が少ないため手厚く子どもの発達に応じた質の高い保育を行っている。年齢ごとのクラスはあるが、子ども一人ひとりの発達を考え、クラスごとの活動のみを行うのではなく、その子にあった活動・生活を心掛けている。

このインタビューって?
保育士が安心して転職できることを目指す”このゆび保育”が、素敵な保育園におうかがいし、経営者や園長先生にじっくりインタビューします。
取材担当は、このゆび保育の"まい"です。保育士として13年(海外の保育園でも働いてました!!)働き、保育の世界をもっと広く知りたいと思っています!

社会福祉法人砧福祉園 千歳ぴっち小規模保育園 新井園長

 ”嫌だな”と思うことはしたくない


このゆび保育/まい

離職がほとんどないとのことですが、働きやすい環境作りのために心がけていることはありますか?


千歳ぴっち小規模保育園/新井園長

特別なことはしていないです。ただ、”自分が嫌だなと思うことはしたくない”ということだけです。前職で、クラスの会議内容が、知らない間に更衣室での雑談の中で決まっていた、というようなことがありました。だから、知らなかった、聞いていなかった、ということがないようにしたいなと思い、会議は必ず全員出席で行う、伝えきれなかったことは又聞きにならないように一人ひとりに伝えに行くなど、そういうことは気を付けるようにしています。


このゆび保育/まい

いつの間にか話が進んでいる、ということはあることだと思います。小さなことかもしれないですが一つひとつに気を配ることは大事なことだと思います。


千歳ぴっち小規模保育園/新井園長

休憩も初めは保育室の一角でとっていましたが、泣き声が聞こえれば助けに入ったり、電話があったらついとってしまったりするので、それでは休憩にならないですよね。そこでアパートを借りることにしました。

近くに借りているというアパートの一室。Wi-Fiも完備。食事とは別にしっかりと休憩が取れるようになっている。休憩時間と残業は労働環境の上で重要と考え、法人にかけあい、それぞれの園から費用を負担してもらい借りているとのこと。


このゆび保育/まい

休憩場所の確保の為に、アパートを借りているという園は聞いたことがないので驚きました。そこまでして環境を整えているのはどうしてですか?


千歳ぴっち小規模保育園/新井園長

以前、職員組合に勤めていたので、休憩時間や残業などきちんと働く環境を整えていくことは必須だと思ったからです。


このゆび保育/まい

働く上で当たり前のことでも、実際にはなかなかそこまでたどりつかない園もあると思います。そんな中でも、優先して働きやすい環境を整えていこうという思いの背景には、色々な場でのご経験があるからこそなんですね。

先ほど会議とおっしゃっていましたが、共通認識を図るのに、他に何か会議や打ち合わせなどしているのですか?


千歳ぴっち小規模保育園/新井園長

会議は職員会議と、園内研修をしています。園内研修は外部で受けてきた研修をその人が主になって他の職員に伝えています。


このゆび保育/まい

しっかりと園内に還元されているのですね。


千歳ぴっち小規模保育園/新井園長

自分が今まで大きな組織の中で働いてきた経験や様々な環境で学んだこともあり、この小さな園の中だけではなく、社会人としても、必要な経験を積んでいってほしいという思いがあります。また、保育は理想を語れる仕事であると思っています。きれいごとを実現していく姿を職員にも見せていきたいです。苦手なことは誰しもあると思うので、得意なことで、カバーしあいながら保育していければいいと思います。

職員みんなの保育園にしたい


このゆび保育/まい

普段から職員同士色々な意見が言いやすい環境とお伺いしましたが、それはここまでやってきた中で変化してきたものなのでしょうか?


千歳ぴっち小規模保育園/新井園長

経験上やはり、”人間関係が良い”ということが一番大事なのではないかと思います。様々な年代の職員がいますが、自園でも少しずつそういった関係が作られてきたのではないかなと思います。心理的安全性のチェックリストもだいだい達成してるのでは、と職員とも話していました。誕生日にはケーキを買ってくるとか、コロナ前はみんなで飲みに行っていたりとか、ちょっとした雑談とか、そういうところもあるのではと思います。


このゆび保育/まい

そういった何気ないコミュニケーションが様々な場で図れているからかもしれないですね。

仲が良すぎると、同僚という枠を超えて、時に弊害もあると思うのですが、その辺はどうでしょうか?


千歳ぴっち小規模保育園/新井園長

まず社会人としての意識を育てたいという思いがあります。メリハリという意味では、社会人として接しているというところはあると思います。

保育士は社会人としての自覚が薄いと感じていて、報連相、言葉遣い、電話の取り方、など基本的なことはその都度伝えています。また、職員数は少ないので組織図はないですが、何かあった時にはすぐに園長に伝えるのではなく、主任を通していくなど、順序などは気を付けるように話しています。


このゆび保育/まい

ただ仲がいいだけでなく、公の場という線引きがされた中で関係が作られているからこそ成り立っているのですね。

園長になる前からそういった環境を作ろうという思いはあったのでしょうか?それとも、働いていくうちにそういった思いが芽生えていったのでしょうか?


千歳ぴっち小規模保育園/新井園長

“自分の保育園”にはしたくなかった、という思いはありました。一方的に指示すれば簡単だと思いますが、そうではなく、「一緒に考えていきましょう」と伝えています。それは、自分ではできないところもあると思うからです。自分は長年現場で働いてきたので、確かに引き出しはたくさんあるかもしれないですが、自分にはできなくて若手の保育士さんにしかできないこともあると思います。自分の保育園ではなく、自分自身は一歩身を引いて一つのチームを作っているという感覚です。


このゆび保育/まい

できるところを補い合いながらやっていこう、それぞれの良さを認めていこう、という新井園長の想いが職員の方にも伝わっていい関係が築けているのですね。

採用する際に大事にしていること


このゆび保育/まい

職員同士、安心した関係作りが築けていらっしゃいますが、採用する際は、どんなところを大事にしていますか?


千歳ぴっち小規模保育園/新井園長

楽しんで保育しているか?は大事にしたいです。また、話してみて、何か乗り越えようとする人は素敵だなと思います。よく乗り越えられる試練しか与えない、という話がありますが、違うと思っているんです。それは、その人自身がスキルアップして乗り越えられるようになるってことなんだと思います。


このゆび保育/まい

素敵な考えですね。


千歳ぴっち小規模保育園/新井園長

何か困難なことがあった時に、それを乗り越えようとしてきた人は、きっと大丈夫だと思うのです。強いて言うならそんなところだと思います。と言っても、なかなか辞める人は少ないので、今まで2人くらいしか採用面接に当たっていないのですけどね(笑)保育士として、色々な経験をしておくといいと思います。それが保育に繋がっていく。保育とは「生き様」だと思うからです。

ぐるっと円のようになっている園舎。「壁がないことも風通しの良いところかも」と園長。ちょっと助けが必要な時に声をかけられる、助け合いやすい環境になっている。

千歳ぴっち小規模保育園さんでは、転職に関わらず随時園見学を受け入れているそうです!