子どもの遊びの中におもちゃを取り入れると何がみえてくる?

2020年11月6日

このゆび保育の著名人コラムです。
今回は「認定NPO法人芸術と遊び創造協会 理事長・東京おもちゃ美術館の館長 多田千尋さん」「NPO法人こども発達実践協議会 代表理事・現役認可保育園園長 河合清美さん」のお2人。
「おもちゃと保育」をテーマに対談をした様子をお届けした「後編コラム」です。

きよみ園長エピソード「保育中に気づいたおもちゃの大事さ」

私が、保育士として初めておもちゃの魅力を感じたのは、保育士になって数年目の頃でした。

それまで幼児担当だったのですが、乳児担当になり「遊びの中での共感」ということがサッパリわかりませんでした。幼児なら、一緒に遊んで楽しむことができたけど、乳児だとできることにも限りがあるなと。

そのモヤモヤがしばらくあったのですが、ふと保育園にあった木のおもちゃで遊んだのです。車がカタカタと落ちてくるものです。私自身が楽しくて遊んでいたら、近くに子どもたちが寄ってきて、興味深そうに見ていたのです。きっと子どもたちも面白かったんだと思います。


それをみたとき「おもちゃを通じて、共感が生まれている!」と感じたんです。そこからおもちゃということに興味を持って、色々と学ぶようになりました。

そういうことがあったんですね。「共感」というキーワード、私も大切にしています。

遊びや保育の中におもちゃを取り入れることで、どんな変化が起きましたか?

少し専門的な話をすると、おもちゃは大人と子どもの間に「3項関係」をつくる手助けをしてくれると思っています。

子どもは育ちの中で、ママやパパとの2項関係をまずつくっていきます。「私がいて、ママがいる」という感じですね


前編でお話いただいた3大グッド・トイは、まさに2項関係づくりをとても促進するものだと思います!

なるほど! 3大グッド・トイは、やはり大事ですね。

3大グッド・トイが2項関係づくりを促すですね。おもちゃが3項関係づくりに繋がるとのことですが、具体的には・・?

私とママという関係ができて、子どもがおもちゃで遊び始めます。

今度は「私とおもちゃ」になるのですね。遊んでいると子どもはふとママを見て、心の中で「ママ、面白いね」と気持ちを確認します。


そこでママが笑顔で返すと、子どもはまたおもちゃで遊び始めます。

このように、おもちゃという共通のものを二人で共有、つまり共感するという関係性をつくっていくのです。まさに、私が若い頃に経験したことも、これに近いと思います。

東京おもちゃ美術館でも「共感」を大事にされていると話されていましたが、詳しくお聞かせいただけますか?

おもちゃ美術館で家族に伝えたい2つのこと

私たちおもちゃ美術館では「家族」をとても大事にしており、家族に「共感」と「笑い」を届けようという思いでやっています。

なぜなら、家族は人類の中でもっとも小さな集団であり人類が生まれてから今までずっと存在しています。

けれど、家族という集団は、今の社会で危機的な状況になっていて、これをどうにかしたいのです。なので、私たちはファミリーコミュニケーションを豊かにしたいと思っています。


おもちゃ美術館で、おもちゃでたくさん遊んで、帰りに「お父さんお母さん、今日はたくさん笑ったね!」と、笑い合い共感できる場づくりをしています。

なので、実はおもちゃ美術館には「電気」を使うおもちゃはないのです。ゲームの部屋もあって、男の子たちはまずその部屋に駆け込みますが、電子ゲームは一切ないので少し残念そうにしてます(笑)


必ず人と人がコミュニケーションをとれるおもちゃを置くようにしています。

とても素敵ですね! 

私が若手のときに感じた「私たちいま共感している」が、おもちゃ美術館にはいっぱい満ちているということですね。

そう思います。おもちゃは人と人を繋ぐ「接着剤」になると私は考えています。

けど、おもちゃはこれくらい大事なものだと思うのですが、実はなかなかその地位は高まっていませんね。私が学生時代にドイツに行ったとき印象的な光景をみました。

小さな赤ちゃんを連れたお母さんが、おもちゃ屋の店員に「子どもが産まれました。またよろしくお願いします」と挨拶をしていたのです。

その店員に名札には「おもちゃコンサルタント」と書いてありました。それで、国が違うとおもちゃの捉え方がここまで違うのかと驚き、とても興味を持ちました。

それは興味深いですね。それこそ保育者は、おもちゃに身近に触れていますが、そのように保護者からみられることは多くないと思います。

多田館長が考える「保育者とは◯◯◯◯実践家である!」

そうですね。それこそ保育者は、子どもがもっとも多感な時期に、おもちゃを通じて様々な経験を届けられる存在ですね。

それでいうと、保育者の皆さんにどうしても伝えたいことがあるのです。

それは、保育者とは芸術家であるです。

・・・芸術家? 3大グッド・トイに続き、ワクワクする話ですね!

もう少し詳しく聞かせて下さい。

河合先生は、よく体感されていると思うのですが、保育現場は芸術でいっぱいではありませんか?

例えば、保育者が白い紙を持ってきたら、子どもにとって「絵画」の先生になります。積み木を始めたら「建築」、ピアノの前に座れば「音楽」、絵本を読めば「文学」、その絵本が“おおきなかぶ”だったら「演劇」の先生になるわけです。

で、この5つをまとめると「5大芸術」です。これを実践的に子どもたちに伝える職業は、この社会で唯一「保育者」だけであり、保育者は「5大芸術実践家」だと思うのです。

なので、保育という仕事に誇りを持ってほしいし、常に学び続ける存在であってほしいと思っています。

なるほど!そう言われると、とても誇らしいです。この言葉で、多くの保育者が勇気づけられると思います。

何より私も「保育は常に実践である」と思っているので、その考え方ぜひ色々な保育者に伝えさせて下さい。

なので、保育者の皆さんには、ぜひおもちゃ美術館にきて、おもちゃという芸術にとことん触れて遊んでいってほしいと思います!

そうですね!
おもちゃ美術館への応援も兼ねて、ツアーを企画させてください。

※きよみ園長と行くおもちゃ美術館ツアーが企画されています。本コラムの最後をご覧下さい。

おもちゃ美術館が大ピンチ!

前編でもお伝えさせて頂きましたが、いまおもちゃ美術館が大ピンチに直面しております。

 多田館長から音声メッセージを頂戴していますので、ぜひお聞きになって頂けたらと思います。

多田館長よりメッセージ

 

東京おもちゃ美術館へのご支援お願い致します。
※音声メッセージです

 

※クラウドファンディングへの応援は下の画像から

【イベント案内】きよみ園長と行くおもちゃ美術館ツアー


保育者の皆さま、お待たせ致しました〜
前編コラムで私が思いついちゃった「おもちゃ美術館ツアー」を企画しました!!

このような状況なので、人数限定イベントとなってしまいますが、、ぜひ一緒に遊びに行けたらと思います。
ツアー後には、おもちゃ美術館で感じたこと気づいたことを交流し合う場もつくるので、学びにも繋げて頂けたらと嬉しいです。

素晴らしい企画ですね! 
ただ、きっと保育者の方々だと「もし万が一があったら・・」と心配されると思います。

なので、東京おもちゃ美術館では、感染予防対策を徹底しており、
完全予約制・入館者は定員の3割まで・2時間で入れ替えとしています。

3密にならないように、あらゆる工夫をしておりますので、ぜひ足を運んで頂けたら幸いです。


※「きよみ園長といくおもちゃ美術館ツアーの詳細は、下の画像から