【調査】保育園に対する第三者評価とは?

2020年6月13日

【調査】保育園に対する第三者評価

“第三者評価”という言葉をご存知でしょうか??

第三者評価という言葉を聞いたことはあっても、詳しく知らないという保育士さんは少なくありません。

これには理由があります。

保育業界では東京・神奈川・埼玉・千葉などでは積極的に第三者評価を受けています。一方で、保育園に第三者評価を受けるための補助金が支給されない地域では実施されていない保育園が多いためと言われています。

では保育園における第三者評価について解説していきます。

目次

1.【基本】保育園への第三者評価

2.保育園における第三者評価の目的

3.第三者評価の評価方法

4.第三者評価と監査の違い

5.第三者評価が広がった背景

6.地方の保育園で第三者評価は広がるか

 

【基本】保育園への第三者評価

「第三者評価 保育園」といったキーワードで検索すると、調査結果ばかりが出てくると思います。この第三者評価は簡単にいうと保育園のことを保護者でもなく、働く職員や経営者でもなく、専門の調査機関が第三者の視点からその保育園を調査ならびに数字化することで保育園を評価する制度のことです。

ここのポイントは『専門の評価機関』が調査、その内容を『誰でも見ることが出来るように公表』することです。

公表された評価内容は保育園側が要望を出しても取り下げることは出来ず、所定の年数の間はインターネット上にずっと公開され続けます。

簡単に表現すると以下の図のようになります。

この流れが基本的な保育園における第三者評価とお考えください。

 

保育園における第三者評価の目的

第三者評価は、評価結果を保護者に公表することで、情報提供を行うとともに、サービスの向上を目指すものとされています。つまり・・・これから保育園の入園を検討している保護者はどうしても1日だけの見学ではその保育園がどのような保育園か理解することは難しい。だからインターネット上に公表されている調査結果を参考に自分の子どもを預ける保育園を決める為に役立てるということです。

(イメージは食べログです。しかし専門機関が規定に基づいて調査を行うので、食べログなどの口コミ評価よりも正確なデータを役立てることが出来ます。)

また、これから預けようとしている保護者だけでなく、現在子どもを預けている保護者にもひと家庭ずつアンケートが配布されるので、そのアンケートに自分が日頃より思っている内容を記載することが可能です。その内容は第三者評価の結果に反映させることが可能な為、現在利用中の保護者にとっても、自分たちの想いを伝えることが出来るのです。

”利用者”という意味では、保護者だけでなくその保育園で働いている保育士も日頃から言いにくい保育所への意見を伝えることも可能です。経営側はこの保護者と職員からのアンケート結果も伝えられるため、改めて自分たちの保育園における運営も見直しをすることが出来るのです。

※ちなみに保護者も職員も匿名で開封も第三者評価機関しかあけられないので特定されずに本音を打ち明けることが可能です。

 

第三者評価の評価方法とは

保育園における第三者評価は以下の5点から評価されます。

  1. 各家庭に1部ずつ配布される保護者アンケート(項目ごとによる%評価と自由記述)
  2. 職員一人ひとりに配布される職員アンケート (項目ごとによる%評価と自由記述)
  3. 運営側が提出する評価機関からの質問シート
  4. 各アンケートならびに質問シートをもとに行う事業者ヒアリングと各種関連書類の確認
  5. 保育園の実地訪問による内部調査(実際の保育の様子など)

1.各家庭に1部ずつ配布される保護者アンケート

2.職員一人ひとりに配布される職員アンケート

結果はそのまま割合をグラフにして公開されますので、保育園側は何もすることは出来ません。日頃の評価がそのまま数字で表されます。


3.運営側が提出する評価機関からの質問シート

第三者評価を行うにあたり、予め決められた評価項目に対する質問の回答になります。

(“保育園側”として私が担当したこの質問回答は67項目の質問に答えていき、該当する場合はそれを証明する記録や書類の有無まで記載。このシートの作成だけで大体6~7時間くらいかかりました。)

4.各アンケートならびに質問シートをもとに行う事業者ヒアリングと各種関連書類の確認

ここでは、3で提出したシートが本当に実践出来ているのか確認です。また証明する記録や書類についてもこの時に、内容に不備がないかまでチェックされます。

5.保育園の実地訪問による内部調査

5については、監査や保護者見学と同じように評価担当者が実際の保育の様子を見るだけで、担任の先生たちには原則質問や調査はありません。

 大体この評価をそれぞれ2~3人の評価者にわかれて約半日かけて行われます。

この時の”保育園側”は、理事長、園長、主任といった経営者ならびに保育現場の役職保育士が対応することが一般的です。

5にも記載しましたが、一般の保育士は原則としてヒアリング等はありませんが、監査と同じように運営に関する保育書類等を確認します。その為、事前に保育計画や午睡記録、児童票など各書類がしっかり作成されているか確認されますので、他人事ではありません。

参考:保育園側の記載する回答シート(一部抜粋)

 

第三者評価と監査の違い

基本は同じと考えてよいでしょう。監査についても各都道府県や自治体の担当者が保育園の調査に入るものなので、第三者が評価することは同じです。細かく言ってしまえば第三者評価では監査の時に厳重にチェックされる会計関係やシフトなどの出勤等は原則チェックされません。あくまでも”保育サービス”と”利用者の声”をもとに行う調査です。上述にも記載しましたが、大きな違いは『利用者の声の反映』です。ただ第三者評価については通常の監査指導をしっかり受けていれば、保育園としてそれほど大変ではありません。

参考:アンケート結果の公表(東京福祉ナビゲーションより)

実際にこのような形で、インターネット上にそのまま公開されます。

 

第三者評価が広がった背景とは!?

大きな変革は平成25年です。東京都が保育園に対して第三者評価を受審するように動いたことです。その後は自治体によって差がありますが、それぞれの自治体によって第三者評価の受審を義務付けするようになりました。

“義務付け”ですので当然保育園側は受けなければいけません。ではどうして保育園側はこの義務にすんなり従ったのか。

実はこの第三者評価についての費用は全て東京都と自治体が実質全額負担をする形で予算取りをしたのです。その後、東京都は独自に保育士の処遇改善を行うための多額の補助金(東京都キャリアアップ補助金)を各保育園に支給することになるのですが・・・

『この東京都キャリアアップ補助金の交付の対象となる該当施設は、福祉サービス第三者評価(「「東京都における福祉サービス第三者評 価(指針)」の改正について(通知)(平成24年9月7日付24福保指指第638号)」 に規定するものをいう。以下同じ。)を受審し、結果を公表しなければならない。』

という規定を作ったのです。

つまり、“東京都では第三者評価に関する費用は全額負担する。逆に第三者評価を受けないのであれば、処遇改善に関する多額の補助金は半額にする”という新たなルールが設けられたのです。東京都は平成30年4月の時点で2,811園。認証園で610園。合計3,421園あります。この3,421の保育園が第三者評価を一斉に受ける形になったのですから、保育業界における第三者評価の認知度は大幅に広がったというわけです。

 

地方の保育園で第三者評価は広がるのか??

上述のように東京都を中心に保育園の第三者評価は広がっていきましたが、地方ではまだまだ未実施の地域が多いです。ではこれから未実施の地域でも第三者評価は広がるのか??

答えは“微妙”でしょう。

実は東京都では第三者評価の費用負担額は600,000円を上限とした実費支給となっています。

第三者評価機関もこの補助金制度を理解しているからこそ、ほとんどの評価機関が500,000円~600,000円に定めているのですが、地方の保育園にとってこの600,000円は大金です。

この600,000円があれば契約社員として採用している保育士を正社員に転換またはパート保育士を1名補充できます。地方の保育園は東京と比べて運営費自体が少ない&少子化による定員が埋まらない現象も起きているので経営面の不安を抱えている法人も少なくないのです。

もし地方の自治体も東京都のように第三者評価の費用を負担してくれれば当然、受審をする保育園は増えるのですが、地方の自治体も少子高齢化の影響で予算が縮小方針の為、なかなか難しいといえます。ただ・・・保育所の経営面において定員数の確保をしたいのであれば周囲の保育園が第三者評価を受けていないことで差をつけることも出来るのですが、このあたりが、地域による保育の格差問題の一つとも言えます。

まとめ

今回は保育園における第三者評価について、解説しました。第三者評価については、保育園においてとても重要な制度の一つと言えます。

前半の記述では一見、保護者や職員からのアンケートがマイナスのように感じる方もいるかと思いますが、むしろ円滑な関係が出来ていると、当然高評価の回答が寄せられます。よい結果が寄せられた保育園は雰囲気もよくなりますし、自信にもつながります。

また最後になりますが・・・実はこの第三者評価の結果は保護者だけでなくこれから就職・転職をする保育士、保育学生の参考材料にもなる為、この制度はとても有意義な制度とも言えます。そして現在働いている保育士もよい評価を得ている保育園で働きたいですよね!


最後までお読み頂きありがとうございました。


このゆび保育専属ライター

Yu-ki

【プロフィール】

現在、認可保育園にて乳児部門の副主任として活躍する現役保育士(31歳)。このゆび保育のコラム編集には、自身のスキルアップも兼ねて、時間の合間に調査から執筆まで行う。

新卒で幼稚園に入ったが、保育に魅力を感じ転職。保育の楽しさ、また大変さを感じつつ、今後も保育士を長く続けたいと思っている。Twitterの保育士愚痴アカウントには、共感と一定の理解もあるのが本音。

プライベートと仕事は全く別と考えており、仕事モード以外では、保育のことを考えず、季節に合わせたコーデを中心に気持ちを切り替えている。